【八重垣神社】

この日最初に訪れたのは、誰もが知っている、古事記に登場する『八岐大蛇』『素戔嗚尊(スサノオノミコト)』に関連ある神社です。
『八岐大蛇』は素戔嗚尊が櫛稲田姫を八岐大蛇から救うという、神話の一つですね。神社奥にある『佐久佐女の森』に八重垣を造り、そこに稲田姫を隠して八岐大蛇を退治した後に夫婦となります。
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に
八重垣つくる その八重垣を

という歌を聞いたことがあるかと思いますが、これ、実は素盞嗚尊がその時に詠んだ、日本最初の和歌といわれています。

佐久佐女の森の入口には椿が一輪咲いて迎えてくれました
八重垣神社の奥にある佐久佐女の森は、八重垣の名の通り幾重もの垣根に囲まれています。この森を、小泉八雲は『神秘の森』と呼んだそうですが、八重垣神社の奥の院は、この垣根を奥へ奥へと進んで行き『鏡の池』の先にありました。
『鏡の池』はここに隠れた櫛稲田姫が飲料水にしたり自身の姿を映したりしたと伝えられていて、今尚、櫛稲田姫がここに佇んでいるかのようです。『神秘の森』と呼びたくなる所以かもしれません。

鏡の池ではこうして静かに池をのぞき込んでいる人が絶えません
ここを訪れる方は皆さん何やら静かに息を殺して真剣に池を見つめています。社務所でいただいた占い用紙を池に浮かべてコインを乗せ、『鏡の池の縁占い』をしているのです。
用紙を水面に置き、その上に10円玉か100円玉を乗せて沈む早さでご縁の遅速を占うというもの。
私たちもやってみました。水に浮かべると浮き出る文字。そこに願いや想いを載せて祈ります。
なかなか沈まない?
沈まなかったらどうしよう?
と不安になり出した頃、姉と私ほぼ同時に、7分経った頃に池の中に一気に吸い込まれるように沈んでゆきました。(やれやれ…ホッ… 笑)

池の奥にある稲田姫命をお祀りする「天鏡神社」があり、ありがとうございますの想いをお伝えして八重垣神社とお別れです。
とても気持ち良い空気が流れる天鏡神社
【はにわロード】
ここから神魂神社までの2km弱の道のりは『はにわロード』という整備された道を行きます。
この道は自然石でできた茶色の舗装道路になっていて、ひたすらこの茶色の道を行けば神魂神社に辿り着くことになっています。標識や看板要らずで景観を壊さない素敵な道しるべです。
道すがら“はにわ”の模型が あちこちにあるのも、こっちだよ と案内してくれているかのようで、のんびりゆったり楽しんで歩けました。


毎日こんな所をお散歩できたらいいなぁ・・・と思わずにいられない光景が続きます。
まるで絵本の中のに迷い込んだかのよう
【国宝の神社 神魂神社】
周囲はごくありふれた長閑な田園風景。そんな中にある一の鳥居をくぐると二の鳥居までの真っ直ぐに伸びた道の左側には灯籠が、右側には桜の木。春はどんなにか美しいことでしょう。
真っ直ぐ続く参道の右側は桜並木の開花を見てみたい
この道は神様が通る道。そんな印象を受けます。
飾らない清らかさと穏やかな空気に包まれていて心惹かれ、いつまでも居たくなる光景でした。
二の鳥居から先は緑濃い中を古い石段を上がってゆき、神聖な領域といった雰囲気です。


手水舎は苔むして、竹の柄杓は見たことのない形状の上に、置き場には突起が付いていて転がらないようになっています。こうした配慮に、参拝者を迎え入れてくださる温もりが伝わってきます。

振り向いて見上げると、急勾配の自然石のごつい階段がありました。

左手の方にはなだらかな坂道があり「女坂」との表示。こちらは「男坂」ということですね。頑張ってこちらを登りました。これが見た目ほど大変ではなく、楽に登れたのが意外でした。登り切るとすぐ目の前に拝殿が構えています。
石段を上りきると迫りくる拝殿こちらの神社は出雲国造の祖、天穂日命が降して創建したと伝えられるています。こじんまりとした拝殿と後方の本殿、数ある摂社はいかにも古色蒼然とした、歴史を感じさせるものです。

拝殿と本殿

本殿左脇の境内社 貴布袮神社と稲荷社
武勇社、蛭子社、荒神
現在の本殿は正平元年(1346年)の再建とのことで、心柱からその墨書もみつかっており、“現存する最古の大社造”で “国宝” に指定されています。
この構え、潔いまでのシンプルさと古の香り漂う雰囲気は、日本人の心揺さぶるに足りるものと思います。


主祭神が女神なので千木は内削ぎ 神紋は亀甲に「有」の字 その周りの装飾は出雲らしく雲
歴史的価値が十分伝わってくる外観は白木造のように見えますが、実は彩られていた痕があるようです。扉内側や本殿内は今もその様子が残っているので、この目で実際に見てみたいものです。
その本殿内の壁には、流鏑馬神事や境内での相撲を観覧している様子が、天井には九つの瑞雲が五色に彩られているそうです。
八雲の図のはずなのに九つの雲。
それは出雲大社のものとそっくりだそうで、ただ、出雲大社の八雲の図は雲が七つとのこと。そこにどんな物語があるのか気になります。
また、神魂(かもす)というなんとも意味ありげな名称ですが、これは
「神霊の鎮まり坐す所」つまり神坐所(かみますどころ)
→「かんます」
→「かもす」
となったということです。
長い歴史の中でひたすら大事に守られてきて、いろいろな謂れや物語(まだまだあるのですが、書き切れません)が散りばめられているこの神魂神社、かなり心惹かれ、ここに来ることが出来たことは今回の旅で一番の収穫であり喜びとなりました。

国宝の前でパチリ! お気に入りの本殿の前で嬉しい私・・・
いよいよこの旅もこの日の午後を残すのみとなりました。
長くなりましたので、また 続きへ・・・